政府は4月4日、上海の全人口約2600万人の全員にPCR検査を実施し、36時間内に完了せよと通達した。これを受け、中国の16の省や解放軍から5万人以上の支援部隊が上海に続々と到着し、「上海を救助する決戦」が始まった。

 この様子は、2年前の武漢をほうふつとさせた。当時、武漢を支援する医療チームの第一陣は上海から派遣されていた。まさかその2年後に、上海が助けられる立場になるとは、誰も予想しなかっただろう。

 上海のロックダウンをめぐる報道は、連日、中国の各メディアやSNSで大きく注目され、ネット上ではアクセスランキングの上位を占めている。「魔都(上海の別名、まぼろしや輝くなどの意味)は、一体どうしたのか!?」と、高い関心を集めている。

 とりわけ上海のコロナ対応の行方が人々の注目を集める理由は明白だ。これまで上海はコロナ対策の「優等生」であり、全国の見本となっていたからだ。上海は、市民生活への打撃を極力抑えつつ、感染拡大の封じ込めに取り組んできた。その対策は、「陶器を売る店でねずみを捕まえるようだ」と例えられ、評価されていた。

 政府は、あくまでも専門家の意見を重視。上海市民の持つ自律精神の影響もあってか、これまで一度も「全員PCR」や「全域封鎖」が行われることはなかった。今回のロックダウンは、上海市民にとってプライドを傷つけられるほど大きなショックだった。

厳しい環境の中でも独自に工夫し
助け合う上海の人々

 筆者は日頃、プライベートでも仕事でも上海と密接な関係にあるため、この頃はSNSや電話などで毎日友人や関係者と現地の状況を共有している。自分は東京にいるにもかかわらず、上海の混乱ぶりや市民が追い詰められている様子を肌で感じている。桜が満開の街に出るとき、自分がこんなに自由でいいのかという違和感さえあるほどだ。

 ただ、そんな大変困難な状況にいる上海市民だが、市民一人一人は制限された暮らしの中で楽しみを見つけ、工夫し、独自に助け合いながら、窮地を乗り越えようとしている。

 先般の大規模なPCR検査では、順番を待つ列に並んでいる一人の中年男性が片手にワイングラスを持っている写真がSNS上で拡散された。その写真には、「さすが上海だ、おしゃれ! なんと余裕があるのか」と称賛の声が上がっていた。厳しい環境の中で、こうしたユーモアにあふれた市民たちの投稿もSNS上では散見された。例えば、こんな投稿が話題になった。

「うちの小区(マンション数棟の区間、塀に囲まれゲートがある)が夜に封鎖となる予定で、その1時間前、スーパーへ買い出しに行った。走ってゲートを出た際に、守衛さんに『12時までに帰ってくるようにね!』と大声で念を押された。40歳を目前にまさかシンデレラになるとは思いもよらなかったよ」

 食材が不足している中、スーパーでは食材の奪い合いが起こるなどの不格好なこともあったが、貴重な体験として面白くつづる人も多数いた。