そして、彼はこう付け加えた。

「今回、特に注目すべきなのは、上海の若者の活躍だ。これまで一人っ子である若者たちは、わがままで利己的だと指摘されてきたが、今回、若者を中心としたボランティア活動がとても活発だった。ゴミ収集や荷物の仕分け、PCR検査の手伝いなど、その働きぶりは大変素晴らしかった」

ロックダウンごみ収集のボランティアの様子
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 筆者の知人である30代の男性会社員も、ボランティア活動を始めたという。テレワーク中の仕事に支障が出ない範囲で毎日、昼と夜の計2回、自宅周辺の2棟のマンションのごみ収集を担当している。

「封鎖で住民が一歩も部屋から出られないので、玄関の外に置いてあるごみを収集し、ごみ集積場まで運んでいる。うちのマンションは1990年代に建てたため、高齢者が多い。われわれ若者が助けてあげないと、という気持ちでボランティア活動に参加している。これは当たり前のことだ」と、彼は話した。

 上海市ボランティアオフィシャルサイトによると、最近では大学生や20代〜30代の会社員を中心とする若者のボランティアの応募人数が毎日1万人のペースで増加し、現在は10万人が稼働している。

 街が封鎖されたことで厳しい生活を余儀なくされている上海市民だが、持ち前の自律と共助精神、そしてユーモアに富んだ感性で苦境を乗り切ろうとする様がSNSや知人の話から伝わってきた。我慢しないで、人に頼る、人から頼られる、お互いさまの社会を作り出す――。経済の発展により隣人とのつながりは希薄になりつつあったが、皮肉にも今回のロックダウンが上海の古き良き姿を思い出させてくれたのかもしれない。