エーザイ,認知症薬で軌道修正の「エーザイ」、内藤CEOの焦燥と“世襲既定路線問題”とは?Photo:123RF

「ここまで忖度すると、あきれるというよりも笑えてくる」と、業界関係者を失笑させる記事が日本を「代表」するクオリティペーパーの系列紙に載った。年度末を跨いで日経産業新聞が3回にわたって連載した『認知症薬 エーザイ再挑戦』である。記事体広告とは謳ってはいないが、エーザイ率いる内藤晴夫CEOの言い訳とも取れる言い分を、ほぼそのまま垂れ流すだけの内容だった。

 連載では、この年初までブロックバスター化は間違いないと豪語していた認知症新薬「アデュヘルム」が、蓋を開けてみれば米国でほとんど売れなかったという事態を、提携相手の米バイオジェンとともに「まったく想定していなかった」と語る内藤CEOの記者・アナリスト懇談会での発言を、右から左へそのまま伝えた。そのうえで、本命は実は「レカネマブ」(一般名)であり、さらに中国で先行して取り組んでいる認知症を対象にした医療一貫システムの構築こそが、真の目標だとする会社側の新たな主張をつらつらと綴った。

 いみじくも経済紙を名乗るのであれば、本来は、近未来の経営上の極めて重要な予測を揃いも揃って外した目の節穴ぶりを糾弾するのが役目であり、場面であろう。でありなから、同紙はそれを行わなかった。さりとて投資家が現在、最も知りたいレカネマブの実力や、医療一貫システムの実現可能性並びに事業収益性に対しても、報道主体としての見解や分析に踏み込むことを巧妙に避けた。これでは旧ソ連邦時代の機関紙『プラウダ』か、令和の『トヨタイムズ』のレベルと、五十歩百歩だ。

 しかも、懇談会の席上、内藤CEOはオンラインで参加したアナリストから寄せられる細かな問いかけに、「質問が技術論すぎる」とか「別のところで聞いてよ」とかと、珍しく逆切れした。それこそ“ニュース”なのに、まったく触れなかった。旧来、「君子」と喧伝されてきた内藤CEOの「暴君」としての一面を、結果として見事に引き出したアナリスト諸氏のほうをむしろ称賛したい。