老後の住まいを考える際、自宅と並んで問題になるのが、親が住んでいた実家の扱いだ。相続後、誰も住まないまま放ってあるケースも少なくない。特集『絶対安心!老後の住まい』(全9回)の#4では、空き家包囲網が強化される中、「空いたまま実家」の上手なたたみ方をお届けする。(ダイヤモンド編集部)
固定資産税の優遇措置解除!
狭まる「空き家包囲網」の実情
「特定空家等に認定されたという通知だけでは所有者の反応は鈍かったが、固定資産税等の優遇措置解除に対してはぐんと跳ね上がる」
こう話すのは、神戸市で空き家対策の窓口となっている建築住宅局安全対策課の担当者だ。
いま、管理不全に陥っている空き家に対して、自治体による包囲網が急速に狭まっている。
基本的な枠組みを確認しておこう。ベースとなるのは2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(略称、空き家法)だ。この法律に基づき、各自治体では次のような状態にある空き家を現地調査の上「特定空家等」に認定する。
①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
②著しく衛生上有害となる恐れのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家等に対して行政指導としての「助言・指導」「勧告」が行われ、それでも改善されない場合にはさらに行政処分としての「命令」「代執行」へと進む。
固定資産税の優遇措置が解除されるのは助言・指導の次、勧告の段階になってからだ。
固定資産税等の優遇措置は「住宅用地特例」と呼ばれる。住宅が立つ土地のうち200平方メートルまでの部分については、固定資産税の評価額(課税標準)が6分の1に、また市街化区域では200平方メートルまでの部分の都市計画税の評価額が3分の1になる。
都市部は土地の評価額がもともと高いので、この特例が解除されると一気に年間数十万円の負担増になることもある。その額に驚く所有者の心中は想像に難くない。
さらに神戸市では21年度から、この特例解除を勧告ではなく、その前の助言・指導の段階でも行うようにした。
同じような動きは他の自治体にも広がっており、空き家包囲網の強力な武器となっている。
次ページでは、「空き家増税」に備える上手な実家のたたみ方を大公開する。現在、相続空き家を売ると譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があるが、その条件や期限などについても詳報する。