企業悶絶!インフレ襲来#7Photo:Bloomberg/gettyimages

火力発電所の燃料である石炭と液化天然ガス(LNG)の世界的な価格高騰のあおりを受け、電気料金は値上げラッシュとなっている。大手電力会社3強のうち、東京電力エナジーパートナーと中部電力ミライズの値上げ幅は、九州電力の2倍を超えている。特集『企業悶絶!インフレ襲来』(全13回)の#7では、何が大手電力の値上げ幅の差を分けたのかを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

資源価格の高騰により
全社6カ月連続で値上げ

「こんなに電気を使ったかな?」。毎月自宅に送られてくる明細書に記された電気料金の金額を見て、首をかしげる読者も少なくないだろう。その感覚は、あながち間違っていない。電気を無駄遣いしたわけではなく、電気料金が値上がりしているのだ。

 昨今の電気料金の値上げは、燃料費調整制度という仕組みによるものだ。簡潔に言えば、火力発電所の燃料である原油や石炭、液化天然ガス(LNG)の市況を毎月の電気料金に反映できる仕組みである。私たちの生活に欠かせない電力を供給する大手電力会社の経営環境の安定化を図るため、政府が1996年に電気事業法に基づき導入した。

 燃料費調整制度に基づき、東京電力エナジーパートナー(EP)など大手電力9社(沖縄電力を除く)は、世界的な資源価格の高騰を受けて2021年9月から6カ月連続で値上げを実施している。大手9社各社の22年2月の電気料金値上げ率は、21年1月の平均モデルに対して1割以上も増加している。

 とりわけ東電EPと中部電力ミライズの電気料金は約26%の増加。これに対し九州電力はその半分である約13%の増加に踏みとどまり、業界最小の値上げ幅となった。業界トップの東電EPと業界3位の中電ミライズが、業界5位の九電に「完敗」したのだ。

 なぜ東電EPと中電ミライズは値上げ幅で九電に完敗を喫したのか。次ページ以降で、何が値上げ幅で明暗を分けたのかを詳しく解説する。