4月12日、川崎重工業は欧州エアバスと提携すると発表した。なぜ、提携相手は航空機製造で協業する米ボーイングではなく、エアバスだったのか。特集『「円安」最強説の嘘』の#9では、世界のエネルギー事情の激変や円安が後押しした“意外なタッグ”の裏事情を読み解く。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
日本の3重工は歴史的にボーイングと親密
川重が意外な相手と華々しく提携
「欧州エアバスとパートナーシップを結ぶというから何事かと思ったが、発表内容を聞いてみれば納得だ。川崎重工業としては、逃したくないチャンスだっただろう」(重工業界関係者)
4月12日、川崎重工業はグランドハイアット東京で、欧州エアバスとのパートナーシップの締結を華々しく発表した。
エアバスといえば、米ボーイングと世界の航空機市場を二分する巨大航空機メーカーだ。ただし、日本勢が歴史的に強固な関係を築いてきたのはボーイングの方である。三菱重工業、川崎重工、SUBARUの3社は長年にわたり、半ば国策としてボーイングの機体製造を受注してきた。
にもかかわらず、川重はなぜ盟友ボーイングではなく、エアバスと手を組んだのか。実は川重にとってエアバスは、蜜月関係にあるボーイングを差し置く形に見えたとしても、組む価値のある相手だった。
次ページでは、にわかに現実味を帯びてきた川崎重工の「商機」を、エアバスとの提携という視点から読み解く。川崎重工に商機が訪れた背景には、世界のエネルギー情勢の激変と、非資源国の日本を悩ませる円安があった。