民間航空機事業への依存度が高い川崎重工業は、3重工の中で唯一、2021年3月期決算が最終赤字に陥った。次なる成長ドライバーとして期待している事業の一つが、橋本康彦社長の出身母体でもある「ロボット」だ。自動でPCR検査をこなすロボットを開発し、空港や自治体での利用を見込んでいるのだが、それには“隠された狙い“があった――。特集『三菱重工・IHI・川重 本業消失』(全5回)の#3では、橋本社長がダイヤモンド編集部の取材に応じ、苦境脱却の秘策を明らかにした。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
コロナ禍で航空機事業が低迷
希望の光「ロボット事業」をどう伸ばすか
――航空機事業が打撃を受ける中、橋本社長が新たな注力分野に据えているのは出身母体のロボット事業です。今後どうやって事業を拡大しますか。
遠隔操作や自動化に対応したロボットを拡充し、コロナ禍でも対面の仕事を強いられている医療や物流関係者の業務を効率化します。
医療分野では、ロボットを使った自動PCR検査システムを開発済みで、5月に関西国際空港に提供しました。すでに、ある自治体のモニタリング検査(街頭などで行う大規模検査)でも使われています。
物流分野では、二輪事業のオフロード技術を活用した無人配送ロボットを準備中です。バイクの部隊が開発に関わることで、社内の“縦割り体制”の打破も目指しています。
――自動PCR検査ロボットは、検体投入から結果通知までを約80分で終える仕組みで、1日に最大2500検体を処理できます。東京五輪の運営に採用される可能性が取り沙汰されていますが、国との商談は進んでいますか(編集部注:取材は無観客開催が決定する前の7月上旬に実施)。
「観客向けの検査ができないか」と国からヒアリングを受けていたのは確かです。しかし、無観客化するか否かの議論が長引き、開催までの日数が短くなったことから、観客を入れるとしても短期間で準備するのは難しいと判断しました。今回は五輪に関わることはできません。
しかし、自動PCR検査ロボットを開発した狙いはそれだけではありません。
――どういうことでしょうか。