1100兆円の水素バブル#1Photo:DKosig/gettyimages

政府はグリーン成長戦略において、2030年に300万トン、50年に2000万トンの水素を導入する壮大な目標をぶち上げた。この目標を達成するためには、海外からの水素輸入が不可欠だ。そのミッションを課されたのは、総合商社だ。特集『1100兆円の水素バブル』(全8回)の#1では、水素調達でしのぎを削る三菱商事、三井物産、丸紅の戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

電力、製鉄、船舶、航空が水素にたかる
「まるではしかにかかったかのよう」

 307件――。

 菅義偉首相が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言した20年10月26日から半年間、「日本経済新聞」で「水素」というキーワードが登場した件数である。ほぼ毎日のように水素に関する話題が紙面に掲載されている計算だ。

 ある五大総合商社の関係者は「まるで皆がはしかにかかったかのように水素、水素と唱え始めた」と驚きを隠さない。水素を導入すると打ち出した業界は電力、製鉄、船舶、航空、物流などなど幅広い。まさに猫もしゃくしも水素にたかるという状況だ。

 拍車を掛けたのが、政府が20年12月に策定したグリーン成長戦略。脱炭素社会の実現に向けた切り札として、水素を重点分野の一つに掲げ、30年に300万トン、50年には2000万トンの水素を国内で導入する壮大な目標をぶち上げた。

 政府の水素基本戦略によると、国内の水素導入量は200トンにとどまる。これだけ大量に水素を導入するとなると、海外から輸入しなければとても賄えない。水素は原油や天然ガスのような“資源”として扱われることになるのだ。

 海外から大量に水素を調達せよーー。政府からの重要ミッションを課されたのが総合商社である。中でも三菱商事、三井物産、丸紅がしのぎを削っているのだ。