世界的にインフレ圧力が強まる中、主要中央銀行は資産買い入れの終了と利上げに動き始めた。だが、日本銀行だけは様相が異なる。異次元緩和で抱え込んでしまったリスクに身動きが取れず、日銀は自縄自縛に陥っている。特集『「円安」最強説の嘘』の#6では、政府と日銀「蜜月」の功罪について検証する。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
日銀は「詰んで」いるのか
日米金利差拡大に打つ手なし
円安を加速させる最大の要因は、日米金利差の拡大だ。
欧米主要国の中央銀行が金融政策の引き締めに動く中、日本銀行に大規模緩和をやめる空気はない。それどころか「指し値オペ(公開市場操作)」を連発し国債の買い入れを増額、金利上昇を抑制している。
一方、米国はインフレ抑制に向けて既に利上げを始め、金融緩和で膨らんだ保有資産の圧縮にも着手する。金利が高い国の通貨(ドル)が買われ、逆に低いままの通貨(円)が売られる、まさに教科書通りに世界のマネーが動いている。
この現状に対し、日銀は「2%目標の実現を目指して緩和を続けることが適当」(黒田東彦総裁)と、あくまで金利上昇抑制を継続する構えだ。
それが数ある選択肢の中から選び抜かれた決断であれば、国民としては納得できる。
だが今の日銀に、そもそも利上げの選択肢はないようだ。というよりも選ぼうにも選べない、まさに、なすすべなしの「詰んだ」状況に陥っている可能性が高い。
その理由を明らかにする。