米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」ウクライナ軍がロシア軍の侵攻を食い止めるために多用している米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」。米国が同ミサイルを供与している Photo:Future Publishing/gettyimages

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、軍需企業が活況を呈している。ただし、受注が増えるのは海外の世界最大手が中心だ。三菱重工業や川崎重工業といった日系メーカーが恩恵を受ける公算は小さく、むしろ民間航空機の需要減が業績へ与える悪影響が大きくなりかねない。防衛産業の格差の要因を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

軍需企業の株価が、侵攻開始日から
-15%から+20%までの差がある

 ロシアによるウクライナ侵攻は、サイバー攻撃やSNSを駆使したフェイクニュースの流布といった、軍事と情報を駆使した「ハイブリッド戦争」の時代に突入していることを浮き彫りにした。その一方で、戦車やミサイルといった従来の防衛装備の“性能”や“物量”の重要性を改めて突き付けたといえる。

 現在までのところ、ウクライナ軍が健闘し、ロシアの侵攻は計画より遅れているとされる。その立役者となっているのが、ウクライナ軍が多用している対戦車ミサイル「ジャベリン」だ。発射前のロックオン・自律誘導機能があるため戦車などへの命中率が高い。

 元々、ウクライナには米国製のジャベリンが配備されていたが、ロシアによる侵攻後、欧米諸国が追加の武器供与を急いでいる。

 その結果、ジャベリンを製造するロッキード・マーチンなど米軍事産業大手には追い風が吹き、株価が2割近く上昇している企業も珍しくない。

 他方で、三菱重工業や川崎重工業、IHIといった防衛装備メーカーは総じて米国企業ほど“恩恵”を受けてない。それどころか、民間航空機事業のウエートが高い企業にとっては、むしろマイナス影響のほうが大きくなりそうだ。次ページ以降では、日米の防衛産業の格差の実態をみていこう。