SBIグループ傘下で生命保険と損害保険、少額短期保険5社を抱える持ち株会社、SBIインシュアランスグループ。少短市場では、5社の収入保険料を合計すると業界トップだ。特集『選別される 生保・損保・代理店』(全28回)の#17では、大手生保が少短子会社を設立して市場参入が続く中でどう迎え撃つのか、乙部辰良会長兼社長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 藤田章夫、片田江康男)
少短会社5社を抱える市場リーダー
大手生保の参入で競争激化をどう乗り切るか
2022年4月5日、日本生命保険がニッセイプラス少額短期保険を設立し、少額短期保険市場に参入した。
19年8月に住友生命保険が第一生命保険と競り合った末にアイアル少額短期保険を買収して、大手生保として市場参入に先鞭をつけた。20年1月には、その第一生命が第一スマート少額短期保険を設立して追随。20年3月に参入を表明した日本生命は、ヒト・モノ・カネにおいて保険業界ナンバーワン。その王者が少短市場に乗り出すとあって、業界内外から大いに注目されていた。
少短の商品は、死亡保険なら保険金額300万円以下で保険期間1年と「少額」で「短期」。そのため商品内容はシンプルで保険料が安い。システムコストを安く抑えられることも、保険料を安く設定できる理由の一つだ。
しかも、事業の立ち上げやすさにおいて、生損保とは比べものにならない。商品審査は生損保が認可(一部届け出)である一方、少短は届け出(審査条件付き)のため、開発から市場投入までのスピードが速い。
こうした保険料の安さと機動力の強さが、大手が参入する最大の動機だ。少短市場を通じて若年層の開拓を行ったり、新たなニーズがありそうな分野に商品を投入したりすることで、手軽にマーケティングができるからだ。また、少短市場でつかんだ顧客をいずれ、大手の顧客に誘導するというもくろみもあるだろう。
ただし、少短事業そのものでは、さしたる利益は見込めない。実際、すでに参入している少短会社の多くは赤字だ。
また、既存の生損保と比べて参入障壁が低く、規制も緩いが故に、前代未聞の“事件”も起きてしまった。
少短会社のjustInCase(ジャストインケース)が提供するコロナ保険において、新型コロナウイルスの感染急拡大による保険金支払いが急増したため、保険金額の減額を既契約者に遡及して適用せざるを得なくなったのだ。
大手の参入と“事件”は、少短市場がまさしく激動期に入ったことを意味する。その少短市場で、傘下の少短会社5社の収入保険料を合算すると、業界トップとなるSBIインシュアランスグループは、競争環境の変化や大手の戦略をどう見ているのか。
次ページでは、旧大蔵省出身で、16年に財務省退官後、SBIインシュアランスグループに転じた乙部辰良会長兼社長に話を聞いた。
住宅・生保・火災・ペット
関連性高い分野にシナジーあり
――日系大手生保の少短市場の参入が続いています。どのように見ていますか。
大手はシニア向けに、医療の分野で商品を出すところが多いようですね。この分野では、今後も新たな参入が続いて、競争が激しくなるのではないかと思います。