COVID-19発症後、血栓・出血に注意する期間写真はイメージです Photo:PIXTA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、血管内で血液が“凝固”する「静脈血栓塞栓症(VTE)」リスクを上昇させるが、いつまで高リスク状態が続くのだろう。

 スウェーデン・ウメオ大学の研究グループは、公衆衛生庁の感染症監視システムを使い、2020年2月1日から21年5月25日の期間に新型コロナウイルス陽性例(初発のみ)100万人超を特定。性別や年齢、居住地がマッチした400万人超の陰性例とVTEリスクを比較している。

 具体的には、COVID-19が発症してから180日目までに手足の静脈に血栓が生じる「深部静脈血栓症(DVT)」、その血栓が肺静脈に飛んで血管が詰まる「肺塞栓症(PE)」、凝固異常から生じる「出血(内出血など)」の発生頻度と時期を比較した。

 その結果、DVTリスクはCOVID-19発症70日まで、PEは同110日まで、出血は同60日まで有意に上昇することが判明している。特に命にも関わるPEのリスクは、COVID-19発症早期の1週間以内でおよそ36倍、2週目はおよそ46倍へ上昇することが示された。

 併存疾患や過去のVTEの病歴、手術などの影響を調整した後でも、COVID-19発症1カ月後のリスクは、DVTで約5倍、PEが約33倍、出血はおよそ2倍に増加することが明らかになった。

 また、COVID-19発症後の半年間のリスクは、PEに限ると男性、50~70代、COVID-19重症例ほど高かった。研究者は「感染直後から半年間はVTEと出血リスクが高い状態にある」とし「COVID-19と共存する道を選ぶからには、VTEも警戒すべき」としている。

 DVTやPEは大規模災害時の「車中泊避難」で生じる災害関連疾患として知られている。そのほか、大けがや入院、手術など身動きが取れない状態で起きやすい。

 予防法はとにかく小まめに身体を動かし、水分を摂ること。もともと抗凝固薬など血栓症の治療薬を飲んでいる方は、万が一、COVID-19を発症しても飲み忘れがないように気をつけたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)