歴史上の偉人には
ビジネスパーソンの理想が詰まっている

 一方で、大泉洋さんが演じる源頼朝はこれまでで言えば歴史上の不人気キャラだったのですが、今回のドラマで一部の経営者の支持を得そうです。

 その理由は「冷酷になすべき意思決定を断行していく」彼のスタイルです。経営というものはきれいごとでは進まないことを嫌というほど知っている経営者にとっては、視聴者が「ドキっ」とするようなブラック頼朝ぶりを見て「これは当然の人事だろう」と冷たく相づちを打つのです。

 一部のベンチャー経営者の視点では、菅田将暉さんが演じた源義経も注目キャラだったかもしれません。なにしろ戦略論とイノベーションのどちらにも優れています。

 一の谷の戦いでは、敵の守りの手薄な崖上からのルートを選んで奇襲し、壇ノ浦の戦いでは漕ぎ手を射るというそれまでの戦いにはなかったイノベーションで平家を滅亡に追い込みます。一方で空気を読まない自由さも、少なくともベンチャー経営者にとっては自身のロールモデル足り得るキャラ設定だったのではないでしょうか。

 さて、このように「鎌倉殿時代」の「推しキャラ」をあらためて考えてみると、実は私には圧倒的な推しキャラ・推し武将がいます。

 もっとも『鎌倉殿の13人』では、さほど活躍できずに退出した嫌われキャラ。それが松平健さんが演じた平清盛です。

 ビジネスパーソンが歴史上の人物を「推す」場合の理由にはいくつかのパターンがあります。「部下を引きつける魅力」「時を待つ忍耐力」「地味だが圧倒的な実務能力」「補佐役として実は不可欠な人物」「逆境に追い込まれたときのゆるがぬ決断力」などが典型的なパターンです。歴史上の人物に、ビジネスパーソンの誰もが「こうありたい」と思う姿を重ねているのです。

 中でも、「時代の変革者である」という理由は、一番人気の推し理由ではないかと思います。

 というのも、この「時代の変革者である」という理由に当てはまる日本史上の人物といえば織田信長、坂本龍馬、聖徳太子、平清盛の4人しかいない。

 そのうち織田信長と坂本龍馬は、「経営者が選ぶ日本の偉人トップ100」企画をすればおそらく確実にトップ3に入るのです。さらに第三の男・聖徳太子は一万円札の代名詞として、年配の経営者は大好きです。