「このところ、中国の侵攻に備えた台湾軍の演習が急増し、われわれの漁場が狭くなった気がします。台湾軍のドーンという砲撃音も聞こえるぐらいですから」

「漁業は厳しくなる一方ですが、何よりもまず島内にシェルターを作ってほしいですね。島外に逃げられない場合、必要になりますし、台湾から逃れてきた人たちだって身を潜める場所が必要になりますから」

 与那国島で聞いた声は、先に紹介した元陸将、渡部氏の危機意識とも重なる。

「八重山諸島の自衛隊基地が増強されるのは、われわれからすれば、ようやくここまで来たという思いです。ただ、兵站(へいたん。物資を最前線に運ぶ手段)が最大の課題です。武器や弾薬、飲食料品などをストックしておく場所が必要です。戦争になってからでは間に合いません」

 その与那国島では、台湾の起業家と沖縄の業者により「台湾村」の建設構想が持ち上がっている。その目的は島の活性化だが、もう一つ、有事の際、台湾人の避難場所を作るという狙いもある。それだけ、有事の可能性は大きく、危機感も高まっているのだ。

 八重山諸島の中心、石垣島でも、今年度中に配備される陸上自衛隊の警備隊、ならびに地対空ミサイル部隊や地対艦ミサイル部隊を受け入れるための施設工事が進められている。作業中の大型クレーンの姿は、新石垣空港からも確認できる。

 また、石垣港には、海上保安庁の巡視船と巡視艇が、常時4隻から5隻は停泊している。港を一望できる高層マンションは、その動きをチェックするために中国人が長期滞在し始めたという話も耳にした。

石垣港に停泊する海上保安庁の巡視船石垣港に停泊する海上保安庁の巡視船(筆者撮影)