さらに、「エクササイズを行えば、自然と身体の血流が増します。なので脳へ運ばれる酸素量も増え、それが脳の成長につながりるでしょう。そして、変わっていく能力をサポートすることも強く期待できるというわけです」と、サルツ博士は語っています。

「満足感や達成感がうつ病防止に一役買う」と言う医学博士も…

 米国・ラトガーズ大学行動医療ケアの医療部長で医学博士のキース・R・ストーウェルは、「その人の日常の行動」からもその説明がつくと言います。

「何らかの活動に参加することで、人はより生産的な気分となり、ある種の計画性が得られるはずです。それが満足感や達成感へとつながっている点なども、うつ病防止に一役買っていると考えられるでしょう」と、ストーウェル医学博士は説明します。

 またエクササイズは、「ジムに入会したり、フィットネスのクラスに参加したり、同じ趣味を持つ人たちとトレーニングメニューについて話し合うなど、社会的なつながりを持つ機会をつくり出してもくれます」と言うのは、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部精神科の助教で心理学博士のヒラリー・アモンです。「エクササイズは、ストレス対策としても利用することができるます」と付け加えています。

「週に3時間の運動を行う人はうつになるリスクが17%低くなる」と言う医学博士も…

「エクササイズの習慣がうつ病になるリスクの軽減につながることを示した研究は、ほかにもある」と指摘するのは、『Family Fit: Find Your Balance in Life』の著者で臨床心理学者の資格を持つ医学博士のジョン・メイヤーです。

 彼が引き合いに出したのは、「身体を動かさない人に比べると、少なくとも週に3時間のエクササイズを行う人はうつになるリスクは17%低くなる」と2019年に発表されたハーバード大学の研究です。

「私たちの身体は数千年の歳月をかけて、“じっとしている”ようにではなく、“活動的に動き回る”ように進化してきているのです。私たちの身体は、行動するようにつくられているというわけです。そのため私たちの身体には、アロスタティックバランスまたはアロスタティック負荷(=ストレスによる心身の疲弊)と呼ばれるものがあって、動くこと(運動)がそのバランスの維持に役立っているという研究もあります。つまり、心と身体には直接的なつながりがあるわけで、身体のバランスが心と気分のバランスを保ってくれるというわけです」と、メイヤー医学博士は説明してくれました。

「運動は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬と同じくらい効果的」と言う心理学博士も…

「軽度から中程度のうつ症状の場合、エクササイズが選択的セロトニン再取り込み阻害薬(うつ病治療に使われる一般的な薬)と同じくらい効果的であることを示すデータは、ずっと前からありました」と説明するのは、ニューヨーク大学のランゴーン医療センターの臨床准教授で、ポッドキャストの「Mind in View」で共同ホストを務めている臨床心理学者で心理学博士のテア・ギャラガーです。「脳に与えるエクササイズの影響力には、とてもパワフルなものがあります」とも言います。