東芝で内部対立が激化している。次期の取締役会は非公開化を含む大改革を行う重要なメンバーだが、事業部門からアクティビスト出身の取締役の再任に異論が出ているのだ。組織再編を巡る内紛に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
アクティビスト出身の
取締役候補2人に異論が噴出
東芝における内紛激化の引き金となったのは5月26日の取締役候補の発表だった。1カ月後の定時株主総会に諮る取締役候補に、大株主である米資産運用会社のファラロン・キャピタル・マネジメントとエリオット・マネジメントの現役幹部が1人ずつ含まれていたのだ。
候補者リストを作成した指名委員会委員長を務める社外取締役、レイモンド・ゼイジ氏もファラロン出身。この取締役構成では特定株主の利益を追求することになりかねないとの疑問の声が上がった。
実際、社外取締役の綿引万里子氏は指名委員会でファラロンとエリオットの幹部を候補者とするのに反対したことを明らかにしている。「公平性とバランスを欠いている」というのが反対の理由だ。しかし、社内にはさらに強い不信感を抱く幹部らが複数いる。
ある東芝関係者は「ゼイジ氏は株総での票読みをして、自分の再任が危ぶまれたので、“仲間”となり得るファラロンとエリオットの幹部を取締役候補に迎えたのではないか。保身のために候補者を決めたのなら問題だ」と語る。
同関係者によれば、ゼイジ氏は2019年に取締役に就任した当初は会議でほとんど発言しなかった。だが、小林喜光氏(経済同友会前代表幹事)や車谷暢昭氏(元東芝社長)といった大物やうるさ型が次々退任。残ったゼイジ氏は指名委員会委員長などの要職に就き、発言権を強めていったという。