相続完全ガイド#1Photo:PIXTA

親の死を巡る相続で、遺族に亀裂が生じることは珍しくない。相続で最も重要なことは事前の準備だ。特集『「普通の家庭」が一番危ない!相続完全ガイド』(全14回)の#1では、絶対に知っておきたい相続の基本について、相続専門税理士の橘慶太氏に解説してもらった。

「週刊ダイヤモンド」2022年4月30日・5月7日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

相続トラブルは年1万4617件
「争族」の8割は普通の家で起きている!

 相続税専門の税理士法人の代表として、これまで5000人以上の相続税の相談に乗ってきました。皆さんにまず強調したいことがあります。相続争いは「金持ちだけの話」ではありません。実は「普通の家庭」が一番危ないのです。

 司法統計によれば、2020年に起こった相続争いの調停・審判は1万4617件。このうち遺産分割を巡る争いでは、遺産額1000万円以下が34.7%、1000万円を超えて5000万円以下までが42.9%。

 つまり、「争族」の8割近くが遺産5000万円以下の普通の家庭で起きています。

 また、相続にまつわるトラブルはもう一つあります。それは相続税の税務調査です。

 税務署は相続税の申告漏れがないかどうか、国民一人一人の財産に目を光らせています。安易な相続税対策が、税務調査を誘発してしまうことも多々あります。

 相続トラブルには明確なパターンが存在します。パターンがあるということは、未然に防ぐ処方箋も存在するということ。

 断片的な知識だけで相続の準備をするよりも、知識をしっかりと身に付けてから行動した方が、良い結果になることは間違いありません。まずは絶対に知っておきたい基本から紹介します。