相続税を節税するテクニックとしてよく利用される不動産。しかし、過度な節税に税務当局が目を光らせている。加えて相続ルールの改正で、不動産を巡る新たなトラブルも生じ始めた。特集『「普通の家庭」が一番危ない!相続完全ガイド』(全14回)の#6では、相続専門税理士の橘慶太氏に、最新の相続の不動産事情について解説してもらった。
不動産の時価と相続税評価額の差
不動産購入で相続税が減る理由
「相続税対策のためにアパートを建てた」――。
こんな話を聞いたことがあると思います。確かに、アパートに限らず不動産を購入すると、相続税は大幅に減少します。不動産の時価と相続税評価額に大きな差があるからです。
相続税は、亡くなった人が残した遺産の「相続発生時点の時価」を基に計算します。
遺産が現金や株だけならば時価の集計は簡単。しかし、不動産はそう簡単にはいきません。不動産鑑定士に依頼すれば客観的な時価を算出してくれますが、お金も時間もエネルギーもかかります。
相続税の計算のためだけに、こんなことを納税者に強いるのはあまりにも酷。そこで国は、誰でも簡単に不動産の時価を算出できる仕組みを開発しました。これが「路線価」方式です。
国が日本中の道路一本一本に値段(路線価)を付け、その道路に接している土地の面積を掛け算すれば、簡単に土地の時価が算出できるという仕組みです。この方法で計算された土地の価格を「相続税評価額」といいます。
この仕組みを利用し、相続税を大きく節税することが可能です。