相続トラブルで実は多いのは「親の通帳管理」だ。故人の預金の横領が発覚し、親族で揉めるケースが後を絶たない。加えて横領していないのに、介護などで引き出した現金の使い道を疑われる場合もある。特集『「普通の家庭」が一番危ない!相続完全ガイド』(全14回)の#7では、相続専門税理士の橘慶太氏に、親の通帳管理を巡るトラブルの鉄板対策術を指南してもらった。
相続トラブルの典型パターン
親の預金を「相続人が横領」
相続争いの典型と言っても過言ではないのが、「生前中に、故人の預金を相続人が横領していたことが発覚する」ケースです。
親に介護が必要な状態になると、親の通帳やキャッシュカードを同居している子どもが管理することは珍しくなく、両者が同意しているならば法律上も問題ありません。
問題は、親が亡くなり相続が発生した後です。親の通帳から引き出した現金の使い道が、トラブルの火種となります。
親と同居している子どもは、親の食費、医療費、その他介護に必要な費用の支払いのため、親の通帳から現金を引き出します。
こうした状況で相続が発生すると、他の相続人から、「生活費や医療費にしては現金の引き出し額が多過ぎる!ネコババして現金を隠しているんでしょ!」と疑われることがあります。
疑われた方も黙ってはいません。「介護を私一人に押し付けたくせに!いいかげんにしてよ!」と憤慨し、争族に発展します。
通帳から引き出した現金の使い道を明確にすることは非常に困難。領収書を全て保管していない限り不可能です。