「外出すれば喫茶店も自販機もあるので飲み物の選択肢は多いですが、家の中だと数が限られてしまいます。温かい飲み物ならなおさらです。紅茶やコーヒー、日本茶くらいでしょうか」

 こうして3種類の飲み物が並んだとき、紅茶には、コーヒーと日本茶にはない強みがあるという。

「コーヒーと比べると、紅茶はさまざまな料理に合います。食事シーンでもなじむという点で、常備しておく飲料としてのポテンシャルがあるのです」

 麦茶などを冷蔵庫に常に入れている家庭は多いだろう。コーヒーがそのポジションに入るのは少し難しいが、紅茶はそこに入りやすい存在なのだ。実際、ここ2~3年で昔からあった「水出し紅茶」を強くプッシュし始め、売り上げを伸ばしている紅茶ブランドも増えているという。

「紅茶はアレンジメニューの多さも魅力です。緑茶のアレンジといわれてもすぐに思い浮かばない人が多いでしょうし、コーヒーも砂糖やミルクを入れるくらいの変化が主だと思います。しかし紅茶は、砂糖やミルクはもちろん、フルーツ、ハーブや季節の花、炭酸水、スパイスなど、多様な材料で変化を楽しめる飲み物です。前述のようにタピオカを入れたり、フルーツゼリーや寒天ゼリーを入れたりするのも良いでしょう。ホイップクリームやチーズのクリームを乗せてもおいしいですし、お酒を入れても合う、とても万能な飲み物なのです」

 これだけバラエティーに富んだ飲み方ができる「紅茶」であれば、飽きがこないはずだ。なかなか外出ができなかった自粛期間の気分転換にふさわしい飲み物といえよう。

 感染拡大の影響を受けて飲食店が酒類を提供できなくなり、夜の飲み会の代わりに昼間のアフタヌーンティーへ足を運んだ人も多いという。しかし米川氏は「コロナ禍で紅茶にスポットライトが当たっているのは事実ですが、1人当たりの消費量はそれほど伸びていないのが現実」と話す。

 紅茶は今後、一過性のブームではなく、どんなシーンでも登場する定番飲料となっていくのか。紅茶市場のこれからに期待が高まる。