むしろ、シリコンバレーの経営コンサルタント会社の共同設立者らが著した『カテゴリーキング』(集英社)で示された戦略に近い。これは、「今までにない新しいカテゴリーをいち早く開拓し、その第一人者(カテゴリーキング)になる」という戦略だ。Airbnb、Googleなどの成功戦略がこれに近いという。
ただし、一つのカテゴリーで成功し、それをもとに大企業に上り詰めるこれらのカテゴリーキングとは違い、「小さな池の大きな魚」戦略では、あくまで「小さな池」を並行していくつも作っていく。「小さな成功」を積み上げて大きな成功に持っていくという、独自性の高い、どこか日本企業らしい戦略とはいえないだろうか。
冒頭で触れた「あ、小林製薬」。顧客の潜在的ニーズを示す「あったらいいな」、そして「あっ!」という驚きの表現ということだが、まさしく「小さな池の大きな魚」戦略と、「わかりやすさ」を追求する企業姿勢を究極的にシンプルな形で表したものだろう。同社のCM自体、短い時間で商品の効用をスパッと伝えるシンプルなものばかりだ。
ぜひ本書で、小林製薬が起こしたイノベーションと、それを「わかりやすく伝える」ための斬新な方法論に触れてみてはいかがだろうか。
(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)