円建て金相場が上昇している。1月に入って東京工業品取引所(TOCOM)の金先物は1グラム当たり4700円台と2011年9月以来の高値を記録した。もっとも、これは円安ドル高が進行しているためだ。取引の主流であるドル建ての金相場は下落している。ユーロ相場の上昇を映して、ユーロ建て金相場の下落率はさらに大きい。国際的に見れば、金は売られているといってよい。

 12月中旬以降の金相場(ドル建て)の動きを振り返ってみよう。

 12月12日のFOMC(米連邦公開市場委員会)の政策決定は、やや緩和的な内容と受け止められたが、株高などを受けて長期金利が上昇する中で金相場は売りに押された。13日には欧州諸国が対ギリシャ追加融資を決定し、ユーロ高ドル安となったが、ドル安による金相場の押し上げ観測は広がらず、不透明感の後退が金下落につながった。18日には、米国議会での「財政の崖」回避への前向きな動きが、景気失速リスクの後退とされ、金売り材料になった。

 19日には、米大手証券会社の一角が、金への積極投資で有名なファンドからの資金引き揚げを顧客に勧めていると報道された。同社は、昨春から同ファンドの新規購入の手控えを推奨していたようだ。

 一方、年末には、「崖」回避で合意に近いとの米大統領の記者会見などを材料に、株価などとともに金相場も上昇する動きになった。

 新年1月3日には、12月のFOMC議事録が公開され、量的緩和の出口が近いとの懸念から金が売られた。その後、発表された失業率の高止まりを受けて、まだ出口は遠いとの観測が強まり、金相場はやや値を戻した。

「財政の崖」については、金買い・金売りの両面があった。財政協議が失敗して「景気は後退し、金融緩和が長期化する」とか「ドルや米国株が下落する」とみた買いもあったし、「株価や米国債が下落すれば、投資家のリスク許容度は低下して、金にも換金売り圧力が強まる」とみた売りもあった。