ローマ教皇の中ロ接近、背後に米覇権への警戒感Photo:Mondadori Portfolio/gettyimages

【ローマ】ローマ教皇フランシスコの見方では、ウクライナ戦争は善対悪といった簡単なケースではない。

「赤ずきんは善でオオカミは悪だった。ウクライナ戦争の場合、象徴的な善人も悪人もいない」。ロシアのウクライナ侵攻はおとぎ話ではないとして、教皇は最近、カトリック系の記者団に対してこう話した。

 どちらの側にもつこうとしない教皇の姿勢はカトリック教会を超えて人々を驚かせている。ウクライナ人の苦しみを嘆く一方で、ロシアを加害者として名指しすることなく抽象的な言葉で攻撃を非難している。西側が攻撃を挑発した可能性を一度ならず示唆している。

 教皇の立場の背後にあるのは、米国が支配する世界秩序への警戒と地政学的な対立で西側寄りと見られたくない気持ち、そして多極的な世界で主要な非西側の大国に接近したい思惑だ。

 教皇は近年、中国との関係確立を模索してきた。中国が独立した宗教への弾圧を行っているにもかかわらずだ。だが、中国国内のカトリック教会の司教任命において同国と協力するのに前向きなバチカン(ローマ教皇庁)の姿勢は報われていない。米政府の報告書によると、中国は教会の国家支配を拒否する聖職者への嫌がらせを続けている。