そこで入院医療費の適正化を図るために、2003年から「包括支払い制度」が取り入れられました。急性期入院医療を対象として、傷病の種類ごとに医療費を一括して計算する「疾診断群分類別包括評価制度(DPC制度:Diagnosis Procedure Combination)が導入されたのです。

 これによって、入院日数が長引くことが医療機関の収益にプラスにならなくなったため、病院の都合で入院期間が引き延ばされるようなことは減りました。しかし、入院期間が短縮されると病床の空きが増え、病院としては経営に影響します。

 病院にとって、「病床稼働率」は収益に大きく影響するのです。病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。

 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます。

 また退院は、土日をはさんで月曜日。建前としては、週が明けた月曜日に担当医師の診察を受けて退院許可が下りた、という体裁です。極端な例は減ってきましたが、悪い慣習は根絶されない。入院についての説明の際、患者さんは「この日に入院しないと、他に空きがありません」といわれて承諾することになるのでしょうが、例えば本来なら手術後、10日間の人が15日間の入院になったりする。

 日本には「高額療養費制度」といって医衆費が高額になった場合はあとから還ってくる仕組みもありますから、入院が長引いても結果的に患者さん自身があまり懐を痛めることにならずに済むこともあって、まかり通っているのです。

 厚労省は、金曜入院、月曜退院のケースが頻発する病院にぺナルティを課す制度を設けたりして病院側の都合で入院を引き延ばすことを抑刷しようとしていますが、まだまだこうしたことが行われている現実があります。

日本は「病床大国」でもある
コロナで病床逼迫だったのはなぜ?

 さらに、日本の医療体制の中で、海外に比べて日本が抜きん出て多いものがまだあります。それは「人口あたりの病床数」です。OECD加盟国の病床数(人口1000人当たり)を見ると、日本は12.8床でトップです。OECD平均は4.4床なので、平均の3倍近くの数があることになります。

 しかし、ここである疑問が頭に浮かぶ方もいるかもしれません。「こんなに病床が多いのに、コロナ禍で病床逼迫が叫ばれていたのはなぜ?」と。