ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

あなたの言葉が伝わらないのは、あなたに人としての“魅力”が欠けているから。では、人としての“魅力”とは一体何でしょうか? 実は、見た目の良さや巧みな話術は関係ないことが分かりました。本稿では、サイエンスジャーナリストの鈴木祐氏が3128の科学データから編み出した18のメソッドの一部を紹介します。

※本稿は、鈴木 祐『最強のコミュ力のつくりかた』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

私たちは数秒で相手の魅力をジャッジする

「コミュニケーションがうまい人」とは、人としての魅力にあふれた人です。では、コミュニケーションがうまい人にはどんな能力があると思いますか?

「巧みな話術」「自信に満ちたボディランゲージ」「ルックスの良さ」――。このなかで、いくつあるでしょうか?

 実は、これらの要素は大した影響力を持ちません。人としての根本的な魅力を高めたいなら、ルックスの善し悪しや性格の明るさ、話術の巧みさなどよりも、もっと考えるべきことが他にあるのです。では、人としての魅力の本質は、どこにあるのでしょうか?

 この難問に答えるために、いったん遠回りをして、やや毛色が違う問題について考えてみます。それは、「なぜ人類は無駄話が好きなのか?」という疑問です。

 ご存じのとおり、私たちが日常で交わす会話の大半は、重要な情報の交換とは無縁のコミュニケーションで占められています。バブソン大学が1191人を対象に行った調査によれば、仕事のあいだに交わされるやり取りの45~70%は、知人の噂、天気の話、セレブのゴシップなどの他愛ない雑談で占められていました。日本で行われた研究でも結果は同じで、私たちが交わす会話の47.3%は雑談だったと言います。

 この数字は原始的なコミュニティでも変わらず、いまも未開の土地で暮らす狩猟採集民たちも、1日の会話の大半を雑談で過ごすケースがほとんどです。人類学の調査によれば、雪中のイグルーで隣村の噂話で盛り上がる北極圏のイヌイットや、キャンプファイヤーを囲みながら他部族のゴシップを交換しあうタンザニアのハッザ族など、やはり会話の7割は無益な情報のやり取りに費やされており、専門家の多くは、「すべての人間は“無駄話をしたがる本能”を持つのではないか?」と推測しています。

 しかし、よく考えると不思議ではないでしょうか? 進化の観点からすれば、食料や安全の確保といった、すぐに役立つ情報をやり取りしたほうが、生存の確率は上がるはずだからです。

 人類がコミュニケーションを始めた時期には諸説ありますが、化石や遺伝データなどから、おそらく7万~20万年前には、言語による意思の疎通が行われていたものと考えられます。それ以前の人類は、「カチッ」や「ヒュー」などの擬音しか出すことができませんでした。