病院が赤字経営に苦しむ時代
国公立病院が特に深刻

 国民皆保険制に基づいた日本の公的医療保険制度は、個人負担は軽いにもかかわらず、高いレベルの医療をみんなが受けられる、至れり尽くせりといってもいいようなラグジュアリーな制度です。世界一の高齢化、長寿化は、こうした手厚い保険制度があったからこそなしえたことだということができるでしょう。

 しかし、これまでのやり方では、もうやっていけないのです。なぜなら、日本では赤字経営に苦しむ病院が多数存在しているからです。

 ニッセイ基礎研究所が厚生労働省「医療経済実態調査」を基に発表したレポートによれば、医療法人設立の病院は黒字の病院が増加傾向にあるが、それでも全体の65%ほどです(2018年)。さらに、国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります。

 一般企業であれば、採算のとれない赤字部署は潰されたり再編されたりして淘汰されていきます。しかし病院は医療を提供する場という役割があるため、簡単に潰したりすることができません。

 とくに、地域医療の提供者として公的な性格を強く持つ公立病院はそうです。一方、公立病院は、民間病院よりも経営に対する危機感がシビアではない、ともいえます。いざとなったら税金で補填されてなんとかなるだろうという意識があるからです。

 厚労省は2019年、赤字経営が目立ち、再編統合の必要があると見られる全国424の公的病院名を公表しました。これらの病院には、病床数の削減や診療機能の縮小、他病院との統合といった赤字経営脱却のための施策の実施を要請しています。

 コロナ禍によってしばらくこの話は下火になっていましたが、ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります。