自社にとっての「グローバル」を整理し
何をどこまで適応させるべきかを捉える

 グループ全体の経営資源を、グローバルで最適配分していく前提として、「変化し続ける世の中において、自社にとっての『グローバル』とは何か?」を、常に再確認することが大事です。「顧客」「事業」「地域」「組織」の4つの要素で整理すると、「何をどこまでグローバルに適応させるべきか」が見えてくるはずです。

自社にとってのグローバルの定義出典:『ワールドクラスの経営』(著:橋本勝則、昆 政彦、日置圭介)

 また、「I-Rフレームワーク」を使って、グローバルとローカルのバランスをいかに取るかを考えることも有用です。このフレームワークは、グローバル規模の効率性を実現するための「統合」と、地域ごとに最適化する「適応」がトレードオフの関係にあることを示したもので、「インターナショナル」「マルチナショナル」「グローバル」「トランスナショナル」の4タイプに分類されます。経営理論とまではいえないかもしれませんが、1980年代終盤に登場して以来、世界中の組織で活用されてきました。そして、今日の日本企業にとっても、有意義なフレームワークです。

IRフレームワーク
4タイプ出典:『ワールドクラスの経営』(著:橋本勝則、昆 政彦、日置圭介)

「顧客」「事業」「地域」「組織」の4つの要素で捉えたのが、自社の今の姿であるとすれば、I-Rフレームワークは、より総合的に自社の立ち位置を理解するのに役立ちます。

 例えば、過去のある時期に、グローバル統合の程度が低く、ローカル適応が高い「マルチナショナル」だった企業が、統制や効率を向上させるために「グローバル」に移行する。その後、マーケット対応を深化させるため、一部の機能は再びローカル適合へと揺り戻しながら、徐々に「トランスナショナル」へと移行していく。こうした経路やコンテクストは、ワールドクラスの企業に見られる代表的なものです。

 このように、生き物である企業を動態的に捉えるうえで、I-Rフレームワークは極めて有効なのです。