縮む国・日本の「成長戦略」をどう考えていくべきか?Photo:PIXTA

『ワールドクラスの経営』という著書があるせいか、どのような企業にもグローバル化を勧めていると思われがちですが、すべての日本企業が世界に向かう必要はないと、私は考えています。国の産業ポートフォリオと企業の事業ポートフォリオはつながっており、国としてのポートフォリオにおいて、個々の企業には役割分担があって当然だからです。「高齢化×人口減少」によって縮んでいく日本において、果たして「成長」をどう考えていくべきでしょうか?(ボストン コンサルティング グループ パートナー & アソシエイト・ディレクター 日置圭介、構成/相澤 摂)

日本における「成長」を
どう考えていくのか?

 縮む国・日本。

 世界の歴史上、例を見ないような「高齢化×人口減少」は、すでに昭和の時代に予見されていた社会課題にもかかわらず、日本が本気で取り組もうとする様子はいまだ見られません。

「人口減少は、資源やエネルギー、食料を他国に依存する国にとっては、悪いことではないのでは」という議論もあります。それも一理あるかもしれません。

 しかし、それは、「縮む」ことを受け入れるということであり、その前提のもとでこれまでと同じような「成長」戦略を掲げたところで、まったく説得力はありません。

 よく話題に上がる、イノベーションによってより高い付加価値をつけることは、たしかに大事です。けれども、その領域へ行き着くのはそれほど簡単なことではありません。何より、経済において「数の論理」はいまだに健在です。

 事実、過剰流動性相場の中で、東証の平均株価は上がってきましたが、世界の資本市場における東証の占有率は下がっています。それが、世界からの日本に対する評価の一面です。今後、振り子が本格的に引き締め方向に振れた際にどうなるか、気になるところです。

 そして、人口減少と高齢化はこれからが本番です。これらが大きく加速し、社会構造に急激な変化をもたらすでしょう。

 人間という生物も、社会という制度も、急な変化にはなかなか対応できません。このような縮む国・日本における成長を、どう考えていくのか? これはとてつもない「問い」です。