KDDIで7月2日未明に発生した過去最大規模の通信障害は、携帯電話だけではなく銀行や物流システムなどを直撃。国家の安全保障が課題になる中、脆弱性が露呈した社会インフラを守れるか。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

障害は全国で最大3915万回線
最大26万社に影響

「社会インフラを支えるサービスを提供する事業者として深く反省している」。7月3日、KDDI本社で開催された緊急記者会見の席上、高橋誠社長は憔悴した表情で陳謝した。

緊急会見では、KDDIの高橋誠社長が憔悴しきった表情で障害を陳謝障害発生から30時間余り。緊急会見では、陣頭指揮に当たったKDDIの高橋誠社長が憔悴しきった表情で障害を陳謝 Photo:Kyodo News/gettyimages

 2日未明に発生した大規模通信障害からすでに30時間以上が経過していた。実は、会見直前まで高橋社長は、東京・JR新宿駅近くの「KDDIビル」に設置した大規模通信障害の事故対策本部で陣頭指揮を執っていた。障害発生から数時間後の2日早朝に対策本部入りした高橋社長は、夜を徹しての復旧対策を経て記者会見場に登壇したが、完全復旧のめどは立たないままだった。

 この時点で、はっきりとしていたのは障害の深刻さだった。au、UQモバイル、povoといったKDDIの通信サービスだけではなく、同社の回線を借りる格安スマホ(MVNO)の他、物流や銀行、交通など法人サービスを含め、障害は全国で最大3915万回線に及んだ。特に法人向けでは、トヨタ自動車、ヤマトホールディングス、セコム、大垣共立銀行など最大26万社が影響を受けた。

 会見翌日の4日午後4時ごろ、KDDIは障害について「ほぼ回復した」と発表し、5日夕に「完全復旧」を宣言。障害発生から完全復旧までに、実に4日もの時間を要し、障害の長さにおいても過去最悪のアクシデントとなった。

 ここ数年、通信キャリアによる大規模障害が繰り返されている。