総予測2022#通信Photo:JIJI

政府の圧力を背景にした携帯電話の料金の値下げは一巡した。2022年、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の通信キャリア4社は、21年の値下げのダメージを抱えながら、既存の通信事業以外の“非通信”分野の競争を本格化させることになる。特集『総予測2022』の本稿では、“総力戦”の様相を呈してきた通信業界の新たな勢力争いの構図を予想する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「週刊ダイヤモンド」2021年12月25日・2022年1月1日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

「通信一本足」に限界
4分野の総力戦に突入へ

 菅義偉前政権が大手通信キャリア各社に“圧力”をかけたことで始まった携帯電話の値下げ競争は、小康状態を取り戻しつつある。

 2021年の値下げ競争を振り返れば、まずは3月にNTTドコモがデータ容量20ギガバイト(GB)まで月2700円という衝撃価格の「ahamo(アハモ)」を投入。これにKDDIの「povo(ポヴォ)」とソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」が追随し、楽天グループも「3GBまで0円」のプランで対抗した。

 その後も小刻みの調整は続き、ソフトバンクは21年7月に3GB当たり月900円の小容量プランをラインモに追加。KDDIは9月にポヴォ2.0として基本料金をゼロ円に改定し、10月にはドコモがMVNO(仮想移動体通信事業者)の格安料金プラン「エコノミーMVNO」を全国のドコモショップで販売を開始した。

 こうして21年の値下げ競争は一応の決着を見た。すでに政府の値下げ圧力は、岸田文雄政権になってピタリとやんでいる。どうやら22年の携帯料金競争は小幅なものにとどまりそうだ。

 だが、いったん引き下げた料金を再び値上げするのは難しい。携帯電話の料金収入に頼ってきた通信キャリアは、次世代通信規格「5G」のインフラ整備が本格化するにも関わらず、設備投資を価格に転嫁することはできないまま、業績への悪影響は続く見通しだ。

「もはや通信一本足打法では成長は見込めない」(ソフトバンクの宮川潤一社長)と断言する通信キャリア各社は、既存の通信事業だけではなく、非通信分野へのシフトを急ぐ。

 それでは、通信キャリア各社が注力する通信以外の「3分野」とは何か。以降では、通信を含めた4分野の競争構図を探ると共に、22年の通信業界の優勝劣敗を読みきる。