銀行業界にもクラウド化の波が押し寄せ、地方銀行の「勘定系システム」(預金などをつかさどる基幹業務システム)の在り方が根本的に問い直されている。それに伴い、勘定系システムの開発や運用を担うITベンダー業界では、顧客を巡る新旧勢力の激しい攻防戦が始まった。特集『金融DX大戦』(全22回)の#2では、各社が展開する攻防戦の“戦略”と、地銀システムベンダーの新勢力図について追う。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
地銀のクラウド化というエポックメーキングを担ったのは
システムITベンダーの“王者”にあらず!
2021年5月、北國銀行(石川県)が有店舗型の日本の銀行で初めて、「勘定系システム(預金などをつかさどる基幹業務システム)」をパブリッククラウドMicrosoft Azureに移行し、運用を始めた。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が急務の地方銀行にとっては、まさにエポックメイキングな出来事といえた。だが同時に、地銀システムの開発や運用を手掛けるITベンダー業界にとっても、一つの転換点となったに違いない。
クラウド化した北國銀のシステムは、実は地銀システムITベンダー業界“王者”のNTTデータや日本IBMのものではない。業界シェアにして10%程度しかないBIPROGY(旧日本ユニシス)のシステムなのだ。
今、ITベンダー業界では地銀という「上客」を囲い込もうと、新旧勢力の間で激しい攻防戦が繰り広げられている。次ページから、各社が展開する攻防戦の“戦略”と、地銀システムベンダーの新勢力図を明らかにする。