「ROKUは世界のジンブームを意識した商品で、和素材を使用していた点で国外ユーザーからの手応えがありました。それなら、まだジンが定着していない日本ではどのように受け止められるのかと思い、国内のすし屋などの高級和食店で、食中酒としてのジンを実験的に提案してみたんです」

 このときの提供法はソーダ割りだった。ジンといえばトニックで割って甘くする飲み方がお馴染みだが、ウイスキーや焼酎のソーダ割りが広く親しまれていることもあり、「ジンもお酒本来の味で勝負してみよう」と“ジンのソーダ割り”という新スタイルで試したのだという。

「『ジンってこんなに日本食に合うのか』という驚きの声が集まり、国内でのジン市場の新たな可能性を感じました。ただ、ROKUは4000円とやや高めの価格帯で、日常の食中酒としては認識されにくい状況でした。そこで、食事中にも親しみやすく、より手頃な価格で飲めるジンの開発に乗り出しました」

 ここから約2年間かけて開発されたのが翠だ。翠は食事と親和性の高い和素材にこだわり、もつ煮や唐揚げ、ギョーザなどと飲んでもすっきりした味わいになるように仕上げられている。

「焼き鳥などの薬味として定番のゆずこしょうから『ゆず』、魚の煮付けなどに用いられる『しょうが』、日本人になじみのある『緑茶』の3つの素材を使い、爽やかな味わいを意識しました。リアルな食事シーンをイメージし、いろんな原料を試しながら、今のバランスに行き着きました。テスト段階では、例えば米や梅といった日本ならではの素材も試しました」

 試作品ができてからも、「本当に日常の食中酒としてなじむか」にこだわり、実際に総菜や弁当を購入して相性を確かめたりしたという。ベストな原材料を追求した結果、価格も1本(700ml)1380円と手頃なところに落ち着いた。

「パッケージに涼やかな青い色を用いたのも翠ならではです。『食事中に楽しむジン』という新鮮さと、味わいの爽やかさがひと目で伝わるよう心がけました」