教え合い、学び合う環境の中で組織は変わる

 組織を変えるのは、管理職や新人にとっての先輩社員だけとは限らない。新入社員側からの働きかけが組織を変えることもある。

関根 最近では、教える側である管理職や先輩社員よりも、学ぶ側の新入社員からの働きかけに重点を置いている企業もあります。先ほどの「人脈マップ」は、一般的には教える側が作るのですが、ある会社では、新人側が先輩社員にインタビューしてまとめています。これは、教える側が新人の力量をある程度信じていないとできないことですが、最低限の「経験」と「人々」を整えてあげたら、あとは新人に任せてみることも重要でしょう。その会社では、「人脈マップ」を作る新人がさまざまな先輩社員にインタビューしながら、「自分にできるOCBはありますか?」といった質問もしています。学ぶ側が自ら動き、働くための環境を作っているのです。

 新人は、まだ何にも染まっていないからこそ、旧態依然とした組織に風穴を開ける可能性もあるのだろう。一方的に「教える」「学ぶ」ではなく、社員が双方向で教え、学び合える環境が整っていけば、組織はさらに風通しが良くなっていくはずだ。

関根 組織を変えるために、上の世代が号令をかけても、いままでやってきていないことは簡単にはできません。せっかくフレッシュな人たちが入ってきたのだから、管理職や人事部はその力を活用するべきだと思います。ある企業で、2020年4月入社の社員が、今年2022年入社の後輩たちの入社式を企画しました。2020年入社の社員は、コロナで入社式もできず、何がなんだか分からないままリモートワークを続けたような若手です。入社式を企画したのは、「後輩には、そういう思いをしてほしくない」という思いからでした。私がその入社式の様子を聞いて「面白い」と思ったのは、一般的な入社式では新入社員が着席しているところに役員が入ってきますが、「入社した新人に対するウェルカムの空気をつくりたい」と、役員たちに席に座っていてもらい、そこに新人が入室し、皆が拍手で迎えたことです。これは人事部の協力があってのものですが、私は「とてもいいな」と思いました。新人たちもみんなの拍手に感動したようです。

 論語に「後生畏るべし」という言葉がありますが、まさにそのとおりで、若い人の存在や考え方は決して侮れません。動画を使った新しい学び方など、面白いことをどんどん提案してきますから。人事部が若い世代をうまく後方支援していけば、新人と先輩社員、管理職たちが「学び合う」関係性の中で、組織全体が変わっていくでしょう。