いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた「金融界の鬼才」伊藤潤一氏。地上波をはじめメディアでも注目を集める人物だ。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

【サンジャポで話題! 金融界の鬼才】「長所で身を滅ぼす人」と「短所をうまくカバーする人」の決定的な差Photo: Adobe Stock

変な負け方を避ける努力が必要

冷静な判断力を維持するために必要なのが、「変な負け方を避ける努力」です。

次の図をご覧ください。

【サンジャポで話題! 金融界の鬼才】「長所で身を滅ぼす人」と「短所をうまくカバーする人」の決定的な差

X軸を株価予測、Y軸を業績予測として、株価予測と業績予測が合っていたか外れたか4象限に分けたものです。

通常、プロの投資家は運用結果で評価されますから、「業績予測と株価予測が両方当たった」「業績予測は外れたが、株価は上昇した」のいずれかであることが求められます。「業績予測も株価予測も外れる」「業績予測は当たったけれど、株価は下落した」は評価されません。つまり「50%、50%の陣取りゲーム」をやっているわけです。

しかし私は、「業績予測も株価予測も外れた」の25%だけを避ければいいと考えていました。

最も理想的なのはもちろん「業績予測と株価予測が両方当たった」場合です。

「業績予測は外れたが、株価は上昇した」は結果的に喜べるラッキーなパターンといえます。そして「業績予測は当たったけれど、株価は下落した」パターンは、「あとは株価をどう読むかの問題であり、今後の課題とします」という言い訳ができます。

しかし「業績予測も株価予測も外れた」を繰り返していると、結果が出ず、言い訳もできない状況が続くことになります。4回、5回と負け続ければ気持ちが折れてしまい、6回目にいざチャンスが巡ってきたとき、「もう5回連続で負けているから6回目は違うやり方を考えたほうがいいのではないか」と投資哲学を曲げたくなり、いつもなら「これは買いだ」と判断する場面で、心理的に買えなくなってしまうのです。

この「業績予測も株価予測も外れた」エリアはたかだか25%ですが、非常に危険だと言えます。投資家は、自分自身の投資哲学を貫き通すために、このエリアをいかに避けるかを意識すべきだと思うのです。

かつてリオデジャネイロ五輪柔道で銅メダルを獲得した羽賀龍之介選手は、「身を滅ぼすのは短所ではなく長所」とおっしゃっていました。確かにそのとおりだと思います。

一時の勢いにのまれ冷静さを欠くと、自分の長所を信じることができなくなってしまい、本来勝てる場面でも勝てなくなってしまいます。

では長所で身を滅ぼさないようにするにはどうするべきなのかというと、「この25%さえ踏まなければいい」というように危険なエリアを明確にすることが必要です。

もちろん、完全に避けることは難しいので、もともと確率25%のところ、10%程度に抑えることができれば大成功です。

そのような目標を置くことで、長所を生かすために自分のエネルギーや時間をどう最適配分すべきか見えてくると思います。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)