いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた「金融界の鬼才」伊藤潤一氏。地上波をはじめメディアでも注目を集める人物だ。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

【サンジャポで話題!金融界の鬼才】「部下を育てると自らの首を締めると思う人」と「チームで成果を上げる人」の差が生まれる根本的な理由Photo: Adobe Stock

自分の質問が笑われたら、おかしいのは笑う人の方

東大金融研究会で運用業界への就職を目指す学生たちは、みなアナリストを志望しています。それが運用の世界に入るための第一歩だからです。

しかしアナリストに配属されるのはリスクもあることは知っておくべきでしょう。

たとえば、新卒で証券会社に入社し、シニアアナリストの下にジュニアアナリストとして配属されたとします。40歳のベテランと22歳の新人がタッグを組んでいるうちはいいのですが、そこから10年経過して50歳と32歳になり、ジュニアアナリストが周りに認められると、シニアアナリストはどうなってしまうでしょうか?

実は部下を育てることが、自らの首を締めることになりかねないのです。

これはずいぶん古い話のように感じるかもしれません。

近年、ビジネスの世界では「チーム」で成果を上げることが重視されるようになっています。1人の人がすべてのことを70%ずつ知っているよりは、知りたいことがあるときにいつでも力を貸してくれる「その道のプロ」が身近にたくさんいる価値のほうが高いのです。

これは金融の世界でも同様で、スーパー・ファンドマネージャーはもはや必要とされていません。リスク管理の観点からも、持続可能性の観点からも、チームで動けるファンドマネージャーのほうが重宝されます。

ところがアナリストの世界では、ジュニアアナリストはずっと「丁稚奉公」をさせられるだけというケースがめずらしくありません。銘柄を担当させてもらえるとしても、シニアアナリストが自分では担当したくない銘柄をあてがうだけのことも少なくないのです。

昔は40歳、50歳にもなればアナリストを辞める人がたくさんいました。高い給料をもらって資産を築き、自分のしたいことのために早めに辞めるパターンが多かったのです。

しかし最近は昔ほど稼げないこともあり、「辞めるに辞められずに残っている」年齢を重ねたシニアアナリストが増えています。

このような状況では、自分のエリアを守ろうという意識が強く働くようになりがちで、若手に対して攻撃的になる人が出てくるのも無理はないのかもしれません。

もちろん部下をしっかり育ててくれる人もいますが、ジュニアアナリストは、どのシニアアナリストの下に配属されるのかに命運がかかってしまうのです。

根本的な問題は、アナリストの評価体系にあるのでしょう。部下が活躍することによってチーム力が上がり、そのチーム力のアップが評価につながる仕組みを本気で考えなければ、日本の金融機関で優秀なアナリストは育たないでしょう。

実際、足元では金融業界に優秀な人材が入ってこなくなっていると感じます。これは危機的状況です。

暗い話をしましたが、もちろん大局的に見れば金融業界がなくなることはありませんし、現在のように優秀な人材が集まりにくいときこそ、活躍できる可能性が高いともいえます。

「逆張り」でアナリストを目指して金融業界に入り、5年、10年と頑張って自力をつければ、早いうちに活躍の場を大きく広げていけるかもしれません。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)