大学2022_劇変の序列・入試・就職#24

入試改革で志願者数を減らしながらも、あるデータでは“慶應義塾大学に逆転”という結果が出た早稲田大学。劣勢が続いてきた早慶戦に光明が出始める中、早稲田が繰り出す次の一手とは?特集『大学2022 劇変の序列・入試・就職』(全24回)の最終回では、早稲田大学の田中愛治総長に直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山出暁子)

志願者3割減少でも
学生の質は上がった

――デメリットもある中、政治経済学部の入試改革を断行した理由は?

 日本社会の大きな問題であるデジタル化の遅れと関係しています。

田中愛治総長たなか・あいじ/1975年早稲田大学政治経済学部卒業、81年米オハイオ州立大学大学院政治学研究科・修士博士コース修了、85年博士号(政治学)取得。98年早大教授、2018年より現職。

 この理由は、高校や大学で文系と理系を完璧に分けて教育していること。さらに元をたどれば、今の受験勉強が原因です。受験勉強を最大目標としている高校教育が間違っているし、それを強いてきたのは私立大学の大学入試制度だと考えています。

 また、多くの大学には入学後もリベラルアーツ教育がなく、文系と理系の両方を学ぶ仕組みがありません。その結果、就職後も「人事畑だから」とか「エンジニア出身だから」と自分自身を「文系」「理系」と明確に分けてしまう。それが世界的な企業と比較した際の差を生むと思うのです。

 ある大手電機メーカーの人事部長がこう言っていました。「文系学部出身の社員に、OJTでエビデンスベースでのデータ分析のプレゼンテーションを習得させているが、できるのは40歳手前。欧米ではCEOになる人もいる年齢で、新卒入社時にエビデンスベースで議論ができる文系人材がいないと欧米企業には勝てない」と。この現状を打破するためには大学が変わらないといけない。

――入試改革の成果をどう見ますか。