慶應三田会vs早稲田稲門会#7
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慶應にあって早稲田にない――。それは医学部だ。早稲田大学の田中愛治総長は「医学部創設」を総長選挙の公約に掲げ、勝利を収めた。特集『慶應三田会vs早稲田稲門会』(全16回)の#7では、悲願の「早稲田医学部」実現に向けた三つのシナリオを追った。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)

「早稲田医学部」実現のため水面下で行動
早稲田大出身の医師が集う「稲門医師会」

「また慶應に差をつけられてしまった……」

 慶應義塾大学が東京歯科大学との合併協議を開始したという発表を受けて、早稲田大学のあるOBはそう嘆いた。

 理系分野で慶應大のブランド力を高めているのは、医学部をはじめとする医療系学部の存在だ。宿敵に追い付くためにも、早稲田大にとって「医学部」の実現は長年の悲願である。

 早稲田大の田中愛治総長は、「医学部創設」を2018年の総長選挙の公約に掲げ、勝利を収めた。就任当初は「単科医科大学との対等合併」など、その具体的な戦略に言及したこともある。

 この「早稲田医学部」実現に向けて、水面下で“調査部隊”のような活動を続けている早稲田大のOB会がある。「稲門医師会」だ。

 稲門医師会は早稲田大出身の医師や歯科医師などで構成され、現在のメンバーは約350人。理工系の学部を卒業後に他大学の医学部に入り直した人が中心で、早稲田大で“仮面浪人”をし、中退して医師になった人も1割程度いるという。羽鳥裕会長は1973年に早稲田大理工学部建築学科を卒業した後、横浜市立大学の医学部に入り直して医師免許を取得。日本医師会の常任理事も務めている。

 稲門医師会の発足は16年1月。早稲田大出身で活躍する医師の集まりをつくろうと検討していたところ、早稲田大の総長直属の秘書室から「地域稲門会や稲門法曹会に倣って稲門会をつくってみたらどうか」と助言があった。大学のバックアップもあり、発足式には当時の鎌田薫総長も顔を出し、今も定期的に田中総長と連絡を取り合っているという。

「いつかは医学部をつくりたいという思いはある。ただそこを前面に出すと泥くさくなってしまうので、懇親会としての活動が中心だ」と羽鳥会長は会の趣旨について説明する。それでも早稲田医学部の悲願成就に向けて、着々と人脈づくりを進めている。