今年1月、再来年度に実施される大学入学共通テストから、国立大学志望者に新教科「情報」を必須で課すことが決まった。文理融合により「大学教育を受ける上で必要な基礎的能力」とされる、この新教科。できる受験生と、できない受験生の差が二極化すると目されているが、どのような問題が出され、どう対策すべきなのか。特集『大学2022 劇変の序列・入試・就職』(全24回)#21で、プロが解説する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
共通テストが5教科から6教科へ
高い思考力が問われる新教科
「最新の教科だけに、従来型の知識偏重ではなく最先端の思考力が求められる。それだけに、できる受験生とそうではない受験生の二極化が起きることもあり得ます」
再来年度(2025年1月実施)の大学入学共通テストから、国公立大学志願者に対して、多くの大学が採択を予定している新教科について、そう指摘するのは、キラメックスが運営する小学生~高校生向けのプログラミング教室「テックアカデミージュニア」の平賀正樹カリキュラムディレクターだ。
その新教科とは「情報」だ。今年度から導入された高校の新しい学習指導要領で、プログラミングやデータ活用について学ぶ「情報I」が必履修科目となった。これを受け、国立大学協会は1月、再来年度の共通テストから、原則として「情報」を必須教科とし、従来の5教科7科目から6教科8科目に増やすことを決定。大学でデータサイエンスやAI教育が広がる中、「国立大学の教育を受ける上で必要な基礎的な能力」と位置付けたわけだ。
この決定により、「当教室で学ぶ子どもの保護者面談で『共通テストではどのような問題が出題されるのか』と聞かれることが増えた」と平賀氏は言う。
実際、どんな問題が出題されるのか?下図は、大学入試センターと情報処理学会が公開したサンプル問題の一部だ。
前者はプログラミングで、ドント式で各政党に議席を配分した場合、どの政党が何人の当選者になるかを求めるプログラムについて、会話形式で誤ったプログラムの解決策などを答えさせるという問題だ。また後者は、交通量調査を基に信号の待ち時間を改善させるシミュレーションで、「大学の工学部で学ぶ交通工学の基礎に当たるような問題」(平賀氏)となっている。
無論、共通テストの「情報」では、こうした思考力を問う問題以外にもインターネットの仕組みや情報モラルなど、知識だけで解答できる問題も多く出題されるとみられている。だが、共通テストの他の教科でも思考力を問う実用的な問題が増える中、上記のような問題を完答できるか否かが、高得点への分かれ道になることはまず間違いなさそうだ。
問題は、高校で「情報」を専門に教えられる教師が不足しており、数学教師などが兼任して教える学校も少なくないことだ。この学校間や地域間の人材格差は、一朝一夕で埋められるものではない。
片や、国立大受験の必須教科となったことで、私立大学でも同様の流れが強まることは想像に難くなく、私立大入試でも主要教科の一つへの“昇格”も考えられる。
では、学校に頼れない個々の高校生はどのような対策をすればよいのか?次ページからの解説を読んで、ぜひ早めに対策を講じてほしい。