気象病の国内潜在患者数は1000万人以上!?
気圧の変化が体調不良を引き起こす理由とは?

 天気が原因で体調を崩す人は、気圧、気温、湿度という三つの要素に影響を受けることが分かっています。特に気圧の影響は大きく、ある調査によると、約8割の人が気圧の変化で体調が崩れると回答しています。

 気圧とは簡単に言えば空気の重さのことで、私たちの体は常に空気の重さの影響を受けています。低気圧のときは、空気が軽くなる=体への圧力が弱くなり、反対に高気圧のときは、空気が重くなる=体への圧力が強まります。人間を含め、あらゆる物は常に全方位から気圧の影響を受けています。

 それでも私たちの体がつぶれないのは、受けている気圧と同じ力で体の内部から押し返しているからなのです。このことだけでも、天気が私たちの体に与える影響の大きさをお分かりいただけるのではないでしょうか。

 気圧が変化すると人間の体はストレスを感じるため、それに抵抗しようとして自律神経が活性化されます。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は血管を収縮させ、心拍数を上げて体を興奮させる働きがあります。一方、副交感神経は心拍数を下げて体をリラックスさせる働きがあります。この交感神経と副交感神経の調整がうまくいかないと、頭痛やめまい、気分の落ち込みなど、さまざまな体調不良の原因になるのです。

 天気の影響を受けて体調を崩す人の症状として最も多いのは、頭痛です。

 そのほかには肩こりや首こり、めまい、腰痛といった直接痛みが表れるもの、だるさや気分の落ち込み、うつ症状といったメンタルに関与するものなど、その症状は多岐にわたります。

 以前、愛知県尾張旭市に住む20歳以上の住民6000人を対象に、「体のどこかに3カ月以上続く慢性的な痛みがありますか?」というアンケートを実施したところ、約39%の人が「はい」と答えました。そのうちの約25%は天気が悪いとき、あるいは天気の崩れるときに症状が悪化するとも回答しています。

 この割合を日本の20歳以上の人口に当てはめますと、実に1000万人以上が天気の影響を受けていることがうかがい知れます。また、私の外来にいらっしゃる患者さんの約5人に1人が10代、最少年齢では5歳という若い世代であることを考えますと、潜在的にはもっと多くの方々が悩まされていることも否めないでしょう。