台風やゲリラ豪雨は気象病の天敵
気圧も急激に変化する

 昨今は、各地でさまざまな異常気象が観測されています。それに伴って気象病・天気痛外来に来られる患者さんもどんどん増えています。

 台風を例に挙げれば、温暖化の影響で海面水温が上昇したことにより、日本近海で発生する台風が増えており、発生した2~3日後に上陸することも珍しくありません。非常に近いところで発生するということは、それだけ気圧の変化も急激になるため、必然的に体へのダメージも大きくなります。

 また、ゲリラ豪雨や猛暑日の発生件数も年々増加傾向にあり、天気の影響を受ける機会は増え続けています。気象病の症状には個人差があり、ひどい場合は動くことすら難しくなります。自然災害時の災害難民と聞くと体の不自由なお年寄りを想像してしまいがちですが、実は救助を求める人の中には、天気の影響による体調不良で動きたくても動けなくなっている若い人も多いのです。

 私たちは日常生活の中で、気温や湿度のように分かりやすく気圧の変化、というよりそもそも気圧自体を感じることができません。しかし、実際には非常に大きな圧力がかかっています。

 1平方メートルあたりにかかる気圧(1気圧)は、約10トンといわれます。体の表面積の平均は男性が1.6平方メートル、女性が1.4平方メートル。つまり、男性は約16トン、女性は約14トン(両者を平均すると15トン)もの圧力を常に受けていることになります。

 ちなみに、1気圧を台風の勢力を表す数値としてご存じのヘクトパスカルに換算すると、1013ヘクトパスカル(大気圧の国際基準)。そして、たった1ヘクトパスカル下がっただけで、海水面は1センチ上昇します。広大な海でさえ、少しの気圧変化でそれほどの影響を受けるわけですから、人間の体に多大な影響を与えるのは言うまでもありません。

 2015年に東海大学の研究グループが片頭痛の患者さんを対象に行った疫学調査によると、1013ヘクトパスカル(1気圧)よりも6~10ヘクトパスカル下がると、片頭痛の発症率が上がるという結果が出たそうです。

 台風が通過する際に変化する気圧はだいたい40ヘクトパスカル。その数分の1程度でも体に不調をきたすのですから、おそらくみなさんが想像しているよりもはるかに影響力は大きいのではないでしょうか。気圧の変化というものを、決して侮ってはいけないのです。