官民協議会における徴用工支援団体と日本政府の立場の違いがますます浮き彫りとなっている。しかし、両者を調整しなければならない尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の支持率が急速に低下し、重要な問題への対応よりも政権基盤の維持にきゅうきゅうとしなければならない状況は、問題の解決の大きな支障となろう。

尹錫悦大統領の支持率が
20%台に下落した理由

 7月29日に韓国ギャラップが発表した最新の世論調査によると、尹錫悦大統領を「支持する」人は28%、「支持しない」人は62%であった。尹錫悦大統領の支持率は、支持基盤である大邱・慶尚北道や高齢者でも大きく下落した。

 不支持の理由としては、人事(21%)、経験と資質不足(8%)、経済と国民生活の問題に取り組んでいない(8%)、独裁的・一方的(8%)、疎通が不十分(6%)、警察局新設(4%)、与党内の対立(3%)などの順となっている。

 人事問題は、多くの検察出身者を主要なポストに任命したことが、否定的に映っているのであろう。また、与党内の対立で支持基盤を失っている面も大きい。さらにこれまで尹錫悦政権は経済に重点を置くと言ってきたが、そのビジョンが十分に示されておらず、むしろ、文在寅(ムン・ジェイン)政権幹部の不正の追及、警察との対立に集中しているかのような印象を与えている。

 朝鮮日報は、「国政で大きな失敗があったわけでもない。謙虚さのない態度とよくわからない理由で対立を続け、結果的に自滅したのだ。大統領を含む政権与党が感情的で器が小さく、政治的な利害に執着したため、結果として大統領選勝利からわずか4カ月で政権の危機というあり得ない記録を打ち立ててしまった」としている。

 与党では尹錫悦大統領が権性東(クォン・ソンドン)代表職務代行兼院内代表に送った「(党)内部に銃を向けていた党代表」という李錫悦代表を侮辱するメールの流出が問題となり、裵賢鎮(ぺ・ヒョンジン)最高委員などの辞任が相次ぎ、「新しい指導体制に移行すべきだ」との声が高まっていた。

 こうした状況を踏まえ、与党「国民の力」は8月1日、議員総会を開き、党を非常対策委員会体制に移行することで一致した。所属議員89人が参加した会合で反対意見は1人だけであった。李俊錫代表側の反発と党全国委員会での議決手続きが残っているが、非常対策委体制への移行の可能性が高まっている。