「SNS(会員制交流サイト)でPRしてくれたら料金をキャッシュバック、つまり“無料”にします」――。このような誘い文句でいったん支払いをさせ、その後金を返さない“実質無料”トラブルは、エステなどではよく聞かれるが、今マウスピース矯正で同様の騒ぎが勃発している。その渦中にいるのは、歯科医院チェーンの「デンタルオフィスX」。“被害者”はすでに1000人以上に上るという。特集『決定版 後悔しない「歯科治療」』(全23回)の#2では、矯正治療自体の信頼を失墜させかねない金銭トラブルの経緯を追う。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
被害額は10億円以上?患者たちが憤怒する
マウスピース歯科矯正“実質無料”トラブル
被害者1000人以上、被害総額は実に10億円超えか――。
今、マウスピース矯正サービスの一つ、インビザラインを巡って業界を震撼させる大事件が水面下で勃発している。
インビザライン矯正専門の歯科医院チェーン「デンタルオフィスX」(以下D院)が、1000人以上もの患者と治療費を巡って金銭トラブルになっているというのだ。
患者の一人、Aさんによれば、SNS(会員制交流サイト)で治療を宣伝すれば、いったん患者が治療費を支払う代わりにそれをD院が月々分割でキャッシュバックするから“実質治療費が無料”になるという契約だったのに「D院がそれをほごにした」。
消費生活センターによれば、近年同様の商法によるトラブルの相談が増えており、注意喚起(SNSでPRをすれば商品代金やサービス利用料が無料になる?!-「キャッシュバックで実質無料」「自己負担なし」などの勧誘に注意- 国民生活センター)を行っている。それほどありふれた手口で、客観的にはだまされる方にも非があるように見えるが「エステなどならいざ知らず、れっきとした医療機関でこんな目に遭うとは夢にも思わなかった」(Aさん)。
「お医者さまがそんなことをするはずがない」――。こうして怪しい話に乗ってしまった患者は実に1000人以上に上る。Aさんによれば「人によって異なるが、治療費は全部で100万~150万円前後」というから、単純計算で“被害額”は10億円を超える見込みだ。
しかし、D院はどのようにこれだけの人数を集めたのか。取材を進めると、まずはSNSで影響力の大きいインフルエンサー(フォロワーが多いユーザー)に狙いを絞って彼らのフォロワーに情報を拡散させ、かつてのマルチ商法のように患者を集めていた実態が明らかになった。