「売り上げ」に注目すると、同グループ全体では2019年12月期に3754億円だったものが、コロナ禍で2021年12月期には2646億円まで減少しました。コロナ前と比較すると、ほぼ3割の売り上げが消失したのです。

 一方で、「利益」はどうでしょう。コロナ禍が始まった2020年12月期の営業利益は、大幅な赤字に落ち込みました。しかし、2021年12月期は182億円の黒字を上げます。これはコロナ前のほぼ9割の水準です。

 つまり、「売り上げが3割減っても利益は1割しか減っていないところまで持ち直した」というのが6カ月前(2021年12月期)の決算発表です。その背景には、グループ全体で相当の企業努力があったことが読み取れます。

 そして、問題は今年に入って起きた値上げラッシュです。いよいよアフターコロナで景気回復かという期待感で始まった2022年は、その期待に反してロシアのウクライナ侵攻、上海ロックダウン、急激な円安という形で日本企業にとっては次々とコスト上昇要因が重なりました。ガソリン価格からパンやカップ麺の価格まで、日用品の値上げが続いたことで消費者の財布のひももまた一段固くなってしまいました。

 そこで8月12日の中間決算で発表されたのが、冒頭の店舗閉鎖と値上げだったのです。

 企業戦略のプロとしての視点で状況を分析しますと、今回ガストが行う対策は企業戦略としては間違っていない、むしろ王道といっていい正しい戦略だと思います。

 一方で、消費者は今回の値上げで離れていくかもしれないというリスクは存在します。中でもガストとダイレクトに競合するサイゼリヤが「値上げをしない宣言」をしているのは気がかりな点です。詳しく説明していきましょう。