中国でのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を展開する株式会社InfoDeliver。同社の日本の顧客社数は すでに120社を超え、業界最大手だ。同社の伊藤副社長に、日本企業の中国でのBPOの現状と、同社が中国で展開を始めた新事業、富裕層家庭向けマーケティング支援事業について聞いた。

日系企業のBPOは
これからようやく本格化する

伊藤嘉邦・InfoDeliver取締役副社長

――中国でのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が日本で話題になってから、すでに10年くらい経ちます。日本の企業の中で中国に移管できる業務は、すでに大部分が移管済みなのでしょうか?

 いえ、中国BPOは、まだまだこれからです。現時点で中国に移管できている業務は、日本のBPO潜在需要の1%にも満たないのではないかと思います。

 日本でBPOが欧米企業のようには進まない一番の原因は、人の問題があるからです。間接部門の業務をBPOした後、人員の活用をどうするかという問題があるのです。欧米のような労働市場の流動性がない日本では、BPOで仕事が無くなった人が、社内外で次のポジションを探すのが簡単ではないのです。

 そういう状況なので、日系企業は、体力のあるうちは「無理のない範囲」で少しずつBPOを進めようということになり、間接業務の一部をトライアル的に移管していくという会社が多いのです。

――そうなると、業績が悪化し、聖域のないコスト削減を余儀なくされている企業が御社にとって狙い目ということでしょうか?

 日系企業は、かなり苦しい状況にならないと、コスト削減のために人の問題に手をつけて、大胆なBPOにシフトするという決断はしません。でも一方で、将来を見通しつつ元気なうちから、少しずつBPOに取り組んでいる企業も多数あります。

 実際、昨年くらいから日系メーカーが、円高不況や収益悪化を受け、ようやく本格的にBPOにシフトするようになってきました。生産部門は中国から、より人件費のより安いASEANへシフトするなど、より低コストを追求しているにもかかわらず、これまでメスの入らなかった本社の間接部門も、今後はBPOによるコスト削減のターゲットにならざるを得ないでしょう。