ユーザー部門がCCoEをリードする意義

富士フイルムBIでCCoEを務める田中圭さん 提供:富士フイルムBI富士フイルムBIでCCoEを務める田中圭さん 提供:富士フイルムBI

 富士フイルムBIでは、なぜユーザー部門にCCoEを設置しているのだろうか。田中はその意義を、「部門内の前提や内情があらかじめ共有できていて相談や検討がスムーズ。組織の壁や文化の違いがないぶん、潜在的な課題も吸い上げやすい」と語る。

 さらに田中は、自分たちがクラウドを使いこなせなければ、社外に提供するサービスの質は落ち、顧客の期待に応えるのが難しくなっていくと考えているようだ。「私たちの目的は、単にクラウド基盤を提供することではなく、お客様により良いサービスを提供し、ビジネスや収益に貢献することです。俊敏性、柔軟性、技術革新、どれを取ってもクラウドはサービス開発の武器になる。自分たちがクラウドをより便利に、より早く、より安全に、より安く使うために、自分たちの手で最適な仕組みを作っています」

 コストへのこだわりも顧客への価値提供を見据えてのことだ。田中は、「インフラにかかる費用を少しでも安く抑え、次のサービス開発費用を確保したい」と言う。プロジェクトごとの個別最適ではコスト削減の幅にも限界がある。そのため、サービス横断で全体最適に取り組んでいる。

 富士フイルムBIのクラウド活用とコストの変遷を見てみよう。

富士フイルムBIのクラウド活用とコストの変遷。オンプレミス環境時と比較して、大幅なコスト削減に成功している(富士フイルムBIの資料に基づき作成)富士フイルムBIのクラウド活用とコストの変遷。オンプレミス環境時と比較して、大幅なコスト削減に成功している(富士フイルムBIの資料に基づき筆者作成)
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 富士フイルムBIは、2011年にプライベートクラウド(企業・組織が自社内でクラウド環境を構築し、社内の各部署やグループ会社に提供するクラウド形態)の運用を開始。減価償却、保守、データセンターのハウジングといったインフラにかかる費用を約50%削減した。2014年からは、新規ビジネスのスモールスタートを可能にするため、パブリッククラウドやSaaSを使い始めてハイブリッドクラウドに。30%以上のコスト削減に成功している。2016年にマルチクラウド化。そして今、クラウドを骨の髄まで使い倒すため、クラウドネイティブ化を進行中だ。サーバーレス化に加え、アプリケーションのモダナイズなど、インフラ以外の部分にも手を入れることで、さらなるコスト削減に取り組んでいる。