欧州に大きく遅れる
日本の省エネ基準
以上述べた通り、日本においてカーボンニュートラルを実現するためには、住宅の断熱性能を高めることが極めて有効な手段であることは明らかだが、では果たして現在、省エネ基準適合住宅はどれくらいあって、どの程度の水準に達しているのか。
住宅性能表示制度の実績ベースでは、2019年度で新設住宅の27.7%にあたる約24.5万戸が省エネ基準適合住宅に該当している。新築住宅全体の3割に満たない戸数しか性能表示に対応する住宅が建設されていない状況だ。
さらに中古住宅となると、建設住宅性能評価書の交付ベースでも2019年の累計で僅か6200戸しかない。
2018年の国勢調査によれば、日本の総住宅ストック数は6241万戸と推計されているから、このままのペースだと省エネ基準を満たした性能の高い住宅を増やすという政府の目標達成には、おそらく100年単位の途方もない時間がかかることになる。
では、現在の省エネ基準適合住宅の断熱性能水準はどうなっているのか。
これまでの住宅性能の基準引き上げに関する経緯を追うと、日本で初めて住宅・建築の省エネ基準が導入・制定されたのは1980年、第2次石油危機を契機としたものだった。旧省エネ基準と呼ばれるもので、これが1992年に住宅について新基準が制定されている。
翌1993年には建築の基準自体が強化され、住宅だけでなく病院や学校など公共的な建物も対象となっている。さらに1999年には住宅の次世代基準が制定され、京都議定書に対応するため建築の基準値も強化された。
翌2000年には住宅の基準が住宅性能表示に活用され、2002年には住宅を除く2000平方メートル以上の建物について省エネ措置の届け出を義務化(住宅は2006年)、2003年には建築の仕様基準(ポイント法)が制定された。
これらを住宅について整理すると、省エネ基準は下記の通り、4回の改定で3回引き上げられている。
(1)1980年基準(旧省エネ基準)では熱損失係数(Q値)を基に断熱レベルを規定
(2)1992年基準(新省エネ基準)ではQ値の基準を引き上げ、併せて日射取得係数(μ値)を新設
(3)1999年基準(次世代省エネ基準)ではQ値とμ値の基準をそれぞれ引き上げ
(4)2013年にはQ値とμ値から、外皮平均熱還流率(UA値)と平均日射熱取得率(ηA値)に変更
したがって、現行の省エネ基準は1999年の次世代省エネ基準からほぼ変わりがない(細かい改定はなされている)という状況で、3~7年ごとに段階的に省エネ基準を引き上げているドイツ、フランス、イギリスなどの“省エネ先進国”の基準と比較すると大きく立ち遅れているのが実情だ。