その他にも、攻撃的な選手を守備的なポジションでプレーさせることもあります。守備的なポジションから攻撃的なポジションにボールを出す際に、どのように動き出せばパスをしやすいかを学んでもらうためです。

 このように、選手個々が抱えている課題を自認するために配置転換を行います。現代サッカーでは、本当に時間とスペースがありません。武器を持っているだけでは駄目で、オールラウンダーだけでも駄目。そのどちらも持ち合わせていないと、プロでは戦っていけないんです。圧倒的な武器を磨いて、それでいて何でもできるというのが興國のスタンダード。

武器を持って
2つ目の武器を探させる

 ある記事でも読んだんですが、日本企業でも配置転換は頻繁に実施されています。ですが、そのサイクルが早すぎるせいか、50%ほどのスキルをつけたタイミングで違う部署へ行ってしまう。そうすると、またゼロからの構築が始まりますよね。

 オールラウンダーは育つかもですが、海外と比較して、スペシャリストが育ちにくい環境になっています。これは、配置転換が目的になっているためでしょう。スキルを伸ばすことを優先するなら、Aという部署で50%できる人がBに行くのではなく、Aで100%できる人をBに移した方が伸びると思うんですよね。

 興國では、100%そのポジションをこなせていなければ、他のポジションを与えることはしません。オールラウンダーありきで多数のポジションをこなせても、武器を持たない選手になってしまいますから。「武器を持って、2つ目の武器を探させる」という意味合いで配置転換をやっていますね。

 ここには、ポジション別に試合中に何をすべきかが定まったプレーモデルがあります。プレーモデルを遂行して、成功させる。そのためには何をすべきかを全選手が把握しています。相手ありきのスポーツですので、必ず成功するわけではないですが、成功の確率を高めるために、主体的に行動することを求めています。