安全ベルトをしない
鳶職人に怒るのと同じ
我々はゴールキーパーからボールを繋いで攻撃を構築していきます。相手コートの深い位置までボールを運んだ際には、約100mをボールも人も移動したことになります。それでいて、最後にサイドから真ん中に通すパスが、チームの決め事と違ったら……何メートルもの距離を走ってきた他の選手が無駄走りしたことになるんです。
そういったときには本気で選手を叱ります。ミスした選手が何をそのときに考えていたか、突き詰めて話します。どんなに厳しく叱っても、彼らは追い込まれることがないと思います。皆が同じイメージを共有しているので、パスの認識を誤った選手自身も、どこを間違ったかを理解している。僕たちは3年間という時間のない中で成功の回数を増やして、かつ個人の成長もしなければならない。そのことも選手らは理解しています。
たとえば、鳶職の人が安全ベルトをせずに仕事をしていたら、仲間としてどうしますか?本人は「これで大丈夫」と言っても、「お前にもしものことがあったらどうするねん!」と本気で怒るのと一緒です。仲間が軽い気持ちでサボって、もしもの事故を起こしたら、会社や仕事仲間に大きな迷惑をかけることになる。そこで馴れ合っている組織にはしたくないんです。
ですので、絶対に守らなければいけない約束を忘れたり、怠ったりするときには、相当厳しく要求します。そうでないと、なかなか彼らは次のステージにいけない。そして、叱った選手は必ず次も同じポジションで使います。
当たり前ですよね、叱られて干されて学ばせることは、仲間としてできません。機会を与えて気づいてもらい、次の課題に挑んでもらいたいですから。指導者は理不尽に叱ってはいけないのです。
*「内野智章・興國高校サッカー部監督に聞く(4)」に続きます。