趣味のミュージカル鑑賞は
今後も続ける前提で試算

 資産運用や引っ越しの質問にお答えする前に、まずは毎月の収支を見ていきましょう。

 Dさんの毎月の手取り収入は30万~38万円と記載があることから、中央値の34万円として試算します。別途、住宅手当が月2万円ありますが、支出額から住居費を2万円減らすことにして収入には含めません。

 ボーナスはありませんので、年収は408万円(34万円×12カ月)です。

 一方、支出は記載の項目を合計すると21万9000円ですが、上記の通り住宅手当の2万円を差し引くと、毎月の支出は19万9000円です。

 ただし、このうち2万円はiDeCoの積立金であり、純粋な支出とは異なるため、月間支出は積立金を除いた17万9000円として試算します。

 また、ミュージカルの鑑賞費用が年間3万円から8万円ほど発生すると書かれているので、その費用を年間6万円とします。

 このため年間の支出額は、年間の生活費である214万8000円(17万9000円×12カ月)と、ミュージカル鑑賞費用の6万円を合計した220万8000円です。

 年間収入が408万円、年間支出が220万8000円ですから、年間の黒字額は187万2000円です。

 追加の支出を考慮し、黒字額よりも若干少ない年間185万円を毎年の貯蓄に回すとすれば、Dさんが60歳まで働いた場合、7年間で1295万円(185万円×7年間)を資産に追加できます。

 Dさんは現在、普通預金に約378万円、投資信託に約140万円の合計518万円を保有しています。この金額に上記の1295万円を加えると、60歳時点の金融資産は1813万円になっているはずです。

 ここで先に、資産運用についてのご質問にお答えしましょう。

 Dさんは「生前給付金保険に入るべきか」「普通預金に100万円ほど残して、定期預金に預け替えようか」と悩んでいるようです。

 ご病気をされたことから「生前給付金保険」への加入は一理あるように思われますが、Dさんのご年齢を考えると保険料は安いものではありません。

 仕事を続けているうちは、けがや病気をした際に「傷病手当金」を受け取れる場合があります。

 また、生活を切り詰めて高額な保険料を毎月支払ったのに、大病にかからない可能性も否定できません。これらのことを考慮すると、保険で備えるよりも、金融資産の残高を積み上げるほうがよいでしょう。

 また、普通預金を定期預金に預け替えることには賛成です。これまで貯めてきた資産は定期預金で運用し、iDeCoに積み立ててきた掛け金は100%「投資信託」で運用するとよいでしょう。

 iDeCoを「投資信託100%」で運用しても、Dさんは残りの金融資産を全て預金として保有しています。Dさんが保有する金融資産全体から判断しても、リスクを取り過ぎているわけではありません。また、預金と投資信託による分散効果も期待できると思います。