日本電産の経営幹部が続々と会社を去っている。永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が大量に採用した日産自動車、シャープ、三菱UFJ銀行などの「エリート幹部」だけではなく、日本電産に新卒で入社して永守氏に忠誠を誓ったはずの「生え抜き」人材も抜けているのが実態だ。一体、内部では何が起こっているのか。特集『京都企業の血脈』(全18回)の#7では、その内情に迫る。
「あなたは裸の王様だ」
永守氏を面罵したエリート幹部が退職
「あなたは裸の王様です!」
2020年春。日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)に、面罵した経営幹部がいた。三菱UFJ銀行から日本電産に転籍し、当時、常務執行役員だった渡邊剛氏。人事やコンプライアンスなど内部管理を担当していたが、永守会長と対立。もはやこれまでと退職を決断してから放った発言である。絶対君主の永守氏に対峙した経営幹部の“直言”の内容は、瞬く間に社内に広がった。
日本電産では経営幹部の退職が加速している。9月2日の関潤社長(当時)の退任は氷山の一角にすぎない。こうした流出の動きは、すでに以前から表面化していた。重要ポジションにある経営幹部の退任が明らかになるたび、残された社員に動揺が走っている。
足元で最大の”事件“は、まさに関氏の退任が正式発表された9月2日から始まった。その後、三菱商事元代表取締役から日本電産に転籍した吉田真也・専務執行役員氏が辞表を提出したのだ。
同日の記者会見で永守氏は「外部に私の求める人材はいない」と言い放ったところだった。それに公然と抗議するかのような吉田氏の辞任表明に、社内に衝撃が走っている。
これからも経営幹部の退任は続くのは確実だろう。次ページでは、ここ3年で日本電産を去ったエリート幹部の「退職者リスト一覧」を大公開する。転職組の「外部人材」には出身企業名を付記した。果たして、どこの企業出身の幹部が多く流出しているのか。